5、遺書(遺言)があったら。(前編)
今回のコラムでは、「遺書(遺言)があった場合はどうするのか」について考えてみたいと思います。
最初のコラムで述べましたが、大切な人が亡くなった後に行う3つの手続のうち、2番目の手続にあたる「②相続関連の手続き」を進める必要があります。
1 ある日,あなたが遺族になったなら。(15/6/24 更新)
今回は、相続関連の手続を進めるにあたり、まず遺産の分け方(遺産分割)について、基本的なルールを確認しておきましょう。
まず、遺産分割とは、どのような手続きなのでしょうか。
ごくシンプルに表すと以下のような表現になります。
【遺産分割の手続き】
1、相続人を特定する
2、相続財産を確定する
3、遺言(遺書)があればそれに従って財産を分ける
4、遺言がない場合は、民法が定める相続人の持分に従って財産を分ける
または話し合いで決まった、相続人各自の持分に従って財産を分ける
「1、相続人を特定する」については、法律で決められた故人の財産を相続する相続人とは誰のことなのか(相続人の範囲と順位)、について基本的なルールを前回のコラムで確認しました。
「2、相続財産を確定する」方法については、また別の機会にお話しします。
今回は、「3、遺言があればそれに従って財産を分ける」について考えていきますので、まず、「遺言」とはどんなものなのかを確認しておきましょう。
「遺言」とは、ごくシンプルに言うと、自分の死後、どのように財産を分けて欲しいか、葬儀やお墓はどうして欲しいのか、など、自分の希望、思いを遺す方法の一つです。
遺言には、いくつかの種類があります。
①自筆証書遺言
②秘密証書遺言
③公正証書遺言
④特別方式遺言(危急時遺言など)
①か③の遺言が一般的に多く見られますが、これらの遺言がそれぞれどのようなものなのか、個別具体的な内容については、別の機会にお話ししたいと思います。
では、ここから本題です。
大切な人が亡くなった時、「遺言」が残っていたら、どうしたら良いでしょうか。
まず、その「遺言」が封筒などに入れられて、封をされた状態であれば、開封せずにそのままにしておきましょう。
なぜならば、故人が書いた遺言であれば、まずは家庭裁判所で「検認」という遺言書の形式面をチェックする手続きが必ず必要になります。
遺言の封は、この検認手続きの中で開封されます。
なお、③公正証書遺言以外の遺言は、この「検認」の手続が必要です。
【裁判所での検認チェックポイント】
・遺言書の形状
・加除訂正の状態
・日付
・署名 など
検認手続きの目的は、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、形式面をチェックし、検認の日現在における遺言の内容を明確にして遺言の偽造・変造を防止することです。
遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。
そのため、検認の手続を経て、次は遺言の内容が有効なものであるか否かを検討していくことになります。なお、遺言が複数見つかった場合は、形式面を満たしていることが前提で、日付の一番新しいものが有効となります。
【遺言が有効であるか否かのチェックポイント例】
・法律上の方式に従って作成されているか
・故人が遺言を作成する際に意識がはっきりしていたか(認知症を発症したりしていなかったか)
・誰にどの財産を相続させるか、遺贈させるか等、明確に読み取れる内容になっているか
・法定相続人の遺留分を侵害していないか
つまり、誰かに無理やり書かされたのではないか、偽造されていないか、法律で決まっている遺留分の範囲を侵害していないか等を確認することが必要です。
遺言の内容が有効なものであれば、その記載された内容のとおりに相続財産が分けられることになります。
この時、財産を分配していくのは、「遺言執行者」です。
遺言執行者は、遺言に記載されていればその記載された人が、または家庭裁判所にて選任された場合は、その選任された人が遺言執行者となります。
遺言執行者は法定相続人である必要はありません。
ここで、法定相続人の「遺留分」について、確認しておきましょう。
「遺留分」とは、一定の相続人のために,相続に際して,法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合のことで,被相続人の生前の贈与又は遺贈によっても奪われることのないものです。
つまり、法定相続人の「最低限の取り分」のことが「遺留分」です。
例えば、「コラム4 相続人は誰のこと。」で登場した家族関係図(例)で考えた場合、被相続人の法定相続人は妻、長女、長男の3人です。
単純に法定相続分に従って、遺産を分割する場合、妻の相続分が遺産全体の2分の1、子どもの相続分が遺産全体の2分の1となりますから、長女・長男はそれぞれ遺産全体の4分の1ずつを相続することになります。
・妻(配偶者相続人)
→ 法定相続分 = 遺産全体の1/2
・長女(第一順位)
→ 法定相続分 = 遺産全体の1/2×1/2=1/4
・長男(第一順位)
→ 法定相続分 = 遺産全体の1/2×1/2=1/4
しかし、何等かの事情で、被相続人が、「法定相続人ではない長男の妻に遺産を全て渡す」と書いた遺言を残していたらどうなるでしょうか。
法定相続人である、妻、長男・長女は青天の霹靂。
自分たちが遺産を全く受け取ることができないなど、納得がいくはずもありません。
遺言のとおり、彼らは本当に遺産を全く受け取れないのでしょうか?
いいえ、そんな事はありません。
先に述べたとおり、法定相続人には遺留分という法律で決められた一定の相続権があります。この遺留分の範囲であれば、遺産を受け取ることができるのです。
では、どのような手続きを行えば、遺留分を受け取る事ができるのでしょう。
次回、後編では「法定相続人以外に遺産を渡す遺言が見つかったらどうするか」を考えてみたいと思います。
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