6、故人に借金があったら。
今回のコラムでは「故人(被相続人)に借金があったらどうするか」を考えてみたいと思います。
相続財産と聞くと、プラスの財産、つまり、自分が受け取ることができる財産に気持ちと考えが向かいがちですが、マイナスの財産=支払わなければならない財産が存在することがあります。
その 代表的なものが借金 です。
故人の亡きあと、相続財産の調査をすすめていくと、故人に多額の借金があることが判明することもあります。
故人にプラスの財産がほとんどなく、借金の方が圧倒的に多い場合、相続人が借金を返さなければならない可能性も出て来ます。
その場合、相続人は、
「その借金を引き継ぎ、返済していくのか」
を決めなければなりません。
故人の相続財産を把握する
ここで、相続財産の調査方法を簡単にまとめておきます。
通帳、保険証券、株券、ローンの契約書や土地家屋の権利証など、しっかり整理してあれば、相続財産の調査がスムーズに進むことも多いでしょう。
しかし、書類をチェックすればすぐに相続財産の全てが把握できるとは限りません。
そこで、故人の相続財産の把握をするために、故人の通帳や郵便物をチェックしてみると、色々と分かることがあります。
その場合、故人の通帳や郵便物をどの点に注目して確認すれば良いか、チェックする項目の例をあげてみます。
【プラスの財産】
1、通帳に税金の支払の履歴があるか
→ 固定資産税や自動車税の引落し履歴から、所有不動産・車両等の有無が確認できます
2、通帳に保険料の引落し履歴があるか
→ 生命保険・自動車保険等の有無が確認できます
3、郵便物に納税通知や保険関係の書類はないか
→ 1、2同様、所得不動産・車両等、生命保険・自動車保険等の有無が確認できます。
4、勤務先に従業員死亡時の手続きについて問合せをする
→ 退職金・手当等の有無・金額の確認ができます
【マイナスの財産】
1、通帳の借入・返済の履歴を確認する
→ 銀行や消費者金融、カードローンなどの取引の有無が確認できます
2、カード類・請求書関係書類を確認する
→ 銀行や消費者金融、カードローンなどの借入れ・債務残高の確認ができます
もちろん、相続財産調査の方法はこの限りではありませんが、通帳や郵便物などの履歴や記録から、相続人の知らなかった事実が判明することが多々あります。

しっかりチェックしましょう。
相続の方法
相続の方法には以下3つの種類があります。
1、単純相続
相続財産がプラスかマイナスかにかかわらず、そのまま相続する方法。
2、相続放棄
マイナスの財産が多い場合や、何らかの事情で相続人になりたくない場合に相続を放棄する方法。ただし、基本的には相続の開始を知ってから3ヶ月以内に裁判所で手続きが必要。手続きは遅れれば遅れるほど、複雑、煩雑になり、放棄自体ができなくなる場合もある。
3、限定承認
プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いかわからない場合に、プラスの財産の限度の範囲でマイナスの財産も相続する方法。
ただし、相続放棄と同様、基本的には相続の開始を知ってから3ヶ月以内に裁判所で手続きが必要。かつ、相続人全員が一致して申し立てることが必要。手続きは遅れれば遅れるほど、複雑、煩雑になり、限定承認自体ができなくなる場合もある。
もし、故人に借金など、マイナスの財産があった場合、上記のどの方法で相続を行うか、慎重に検討する必要があります。
つまり、マイナスの財産だけ放棄して、プラスの財産だけ相続します、というような都合のよい事はできません。
よって、相続においては、
① マイナスの財産(借金)も相続の対象になる
② 相続放棄・限定承認は相続の開始を知ってから3ヶ月以内に裁判所で手続きをする必要がある。手続きは遅れれば遅れるほど、複雑・煩雑になり、放棄・限定承認自体ができなくなる場合もあるので注意が必要。
ということを頭に入れた上で、3ヶ月以内に手続きを完了させることをひとつの目安として、プラスもマイナスも含めた財産の調査が必要です。
また、何らかの不安材料がある場合は、早めに専門家へ相談する事をおすすめします。
さて、借金のある・なしに関わらず、「相続を放棄したい」と考えた場合、相続を放棄することができる、したほうが良いのはどのようなケースでしょうか。
次回は、どのような場合に相続は放棄できるのか、その手続き方法についても考えてみたいと思います。
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